吾輩は主である。名前はもうない。
ラウ「なにを一人で不気味にボソボソ喋ってるんですか?」
レアンドル「ラウ、主のあれはいつものだから気にするな」
主「ちょっと待ちなさい、主の扱いが軽いよー?」
レアンドル「失礼しました。おやつの用意ができましたよ、主」
主「わーい、たべるー」
ラウ「主がちょろくて心配ですよ僕は(押し倒したらいけそう)」
レアンドル「ラウ、不敬が過ぎるぞ(お前それはやめろ)」
主「うまぁーーー」
吾輩は主である。名前はもうない。
ラウ「なにを一人で不気味にボソボソ喋ってるんですか?」
レアンドル「ラウ、主のあれはいつものだから気にするな」
主「ちょっと待ちなさい、主の扱いが軽いよー?」
レアンドル「失礼しました。おやつの用意ができましたよ、主」
主「わーい、たべるー」
ラウ「主がちょろくて心配ですよ僕は(押し倒したらいけそう)」
レアンドル「ラウ、不敬が過ぎるぞ(お前それはやめろ)」
主「うまぁーーー」
主「すー………」
ラウ「主ー?って、寝てる」
レアンドル「あ、またか。主、ベッドで寝てください」
主「ん……レア、だっこー」
レアンドル「はいはい、まったくこの人は」
ラウ「………」
レアンドル「どうしたラウ、そんな顔をして」
ラウ「え、いや、なんでもありません」
レアンドル「……?変な奴だな」
ラウ「僕だって大きくなったら……」
主「……」
ラウ「……よいしょ」
レアンドル「ラウ、何をしている」
ラウ「添い寝を」
レアンドル「やめろ」
―
――――――――
―
主「あ、あー………ぁ、っ」
ラウ「はわ………」
ギシ ギシ ギシ
レアンドル「…………」
ギ ギ ギシ
主「ぅあっ……あ、…そこ、ん…」
ラウ「……わ、うわ…」
レアンドル「……………主」
主「……ん?…なに?」
レアンドル「マッサージ中はお静かに」
主「なんで」
レアンドル「見学中のラウの教育に悪い感じになります」
ラウ「…………」
主「お、おう…?」
レアンドル「あと少しで終わりですからね」
主「はーい」
ラウ「……」
レアンドル「……」
レアンドル「はい、終わりです」
主「ありがとねーレアンドル」
レアンドル「はい。では俺はこれで。あとは任せたぞラウ」
ラウ「はい」
・・・自室に戻った途端にうずくまるレアンドル。
レアンドル「……はーーー……」
―
――――――――
―
主「ラウ………もう我慢できない」
ラウ「なっ!?ど、どういう意味ですか主!僕はそういうことはまだ早いと思います!」
主「そういう意味じゃなくて。一緒に寝よう」
ラウ「え、それならいいですよ。なんだ、びっくりしました。……はあ!?」
主「よし、寝るか」
ラウ「ままま待ってください!!な、何言ってるんですか!?そ、そんな破廉恥なことダメに決まってます!!」
主「別に何もしないよ」
ラウ「本当でしょうね……?」
主「うん」
ラウ「……」
主「ほら、おいで」
ラウ「……」
主「おやすみ、ラウ」
ラウ「……おやすみなさい」
ラウ「主、今日の夜は、あの、お話があるのですが」
主「お、なに?」
ラウ「その、お、大人になる方法についてです」
主「大人に?どうして?」
ラウ「ぼ、僕は早く大きくなりたいんです」
主「ふむ?」
ラウ「それで、主と同じ歳になった時に、主と釣り合うような立派な従者になりたいんです」
主「ラウ……」
ラウ「だ、だからお願いします、主、僕に大人のキスを教えてください!」
主「……」
ラウ「……」
主「……」
ラウ「…………あ、主?」
主「………ごめん、ラウ」
ラウ「えっ……いえ、やっぱり僕じゃ」
主「私も知らない」
ラウ「えっ」
主「でも大丈夫!なんとかしてあげる!レアンドルにお願いして私が『大人のキス』を教えてもらってくるよ!」
ラウ「ちょ、ちょっと待ってください!レアンドルさんに!?」
主「うん!」
ラウ「あ、あ、あ、あ」
主「じゃあ行ってくるね!」
ラウ「あ、あるじ〜……」
バン!とレアンドルの部屋に突撃する主
レアンドル「うわびっくりした…どうしたのですか?主」
主「レアンドル、私に大人のキスを教えて〜」
レアンドル「……………説明を求めます」
主「ラウが早く大きくなって立派な従者になりたいんだって、それで私に教わりに来たけど、私も知らないからレアンドルに教わろうと思って!」
レアンドル「……」
主「いい?」
レアンドル「……いいですよ」
主「わーい!」
レアンドル「ただし、俺も教えられるほど経験豊富ではありませんので、その点はご容赦下さい」
主「だいじょぶ!」
レアンドル「では、まずは体験していただきますね。……目を閉じて、主」
主「うん」
レアンドル「では、口を少し開けて下さい」
主「こう?」
レアンドル「そう、そのまま……失礼します」
主「ん……っ!?」
レアンドル「………」
主「ん……っ……んんっ!?」
レアンドル「……」
主「んんんんんん……!!」
レアンドル「……っはぁ……はい、終わりましたよ。これで、大人になった気がするでしょう?」
主「……はぁ……はぁ………」
レアンドル「あと……ラウはまだ子供なので、あまり急ぐ必要は無いと思いますが」
主「う、うん、そうだよね……」
レアンドル「……」
主「……」
レアンドル「……」
主「……レアンドル、もう一回……」
レアンドル「……主」
―
――――――――
―
コンコン ガチャ
ラウ「主、夜分に失礼します。ちょっと――」
レアンドル「ラウ!逃げろ!」
主「ラーウー!」
ラウ「え!?な、どうしたんですかレアンドルさんその格好…って、な、あ、主!?ひゃぁ!主、やめっあっ!」
主「ひゃーすべすべーもちもちーーラウはかわいいねーー」
ラウ「ぬ、脱がさないで!やあああん!!」
レアンドル「………ラウ、犬に噛まれたと思って、強く生きろ」
次の日、二日酔い主と怒りラウ。
ラウ「あ、あるじぃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
主「うわあああああ!ラウごめんなさいいいいい!」
ラウ「許しません!」
主「もう飲まないから!」
ラウ「絶対嘘だ……」
主「……」
主「おはよ」
レアンドル「本日は男性体なのですね、お召し物をご用意します」
主「よろしく」
レアンドル「……主、一つ聞いてもいいでしょうか」
主「なに?」
レアンドル「主は、その、男性体と女性体、どちらが本当の姿なのでしょうか?」
主「んー……どっちもかな」
レアンドル「両方……」
主「うん。こっちの姿は、人間だった頃の、一番楽しかった時の自分をその都度イメージしてるんだ。んで、イメージだからその時私が男の気分なら男、女の気分なら女ってなる」
レアンドル「そう、なんですね……」
主「あ、でも見え方だけで中身は違うよ。今の自分は、人間の時とは全然別の生き物だと思う。自分のことを『人外』って呼ぶのはおこがましいけど。こんなに長く生きてるのに、自分が一体なんなのかよくわからないんだよ」
レアンドル「主……」
主「ま、そんな話はいいや。朝ご飯食べよー」
レアンドル「はい」
主「今日は何?」
レアンドル「キッシュとガレットですよ」
主「おおーやった〜」
―
――――――――
―
ラウ「主、おはようござい、ま………」
主「………ん、おはよ」
ラウ「ほ、本日は男性体なん、です、ね」
主「おう、なんでこっち見ないの?」
ラウ「いやあの、服を……着て頂きたく…」
主「なんで君は女性体の私より男性体の私の裸に恥ずかしがるの?逆じゃない?ん?」
ラウ「あ、あああっ、ち、近い近い!」
主「んふふふーあーラウちっちゃいなぁ」
ラウ「きゃーーーっ!」
主「あー癒されるぅ……」
レアンドル「主、ラウをからかうのはやめてあげて下さい。服をお持ちしました」
主「ありがとーよいしょ」
ラウ「あう………あうう………」
レアンドル「ラウは潜在的に精神が女性寄りなのかもしれませんね」
主「ああ、なるほどね」
レアンドル「なので、可愛いのはわかりますが、程々にしておいて下さい。女性に無体をする男は嫌われますよ?」
主「あはは、はーい」
―
――――――――
―
主「レア」
レアンドル「何ですか、あr!?……ン……ふ……」
主「ん………ちゅ………はー、動揺しないなぁ」
レアンドル「……男性体の主はタラシですね」
主「そぉかなぁ、つってこの体であんま女の子と会わないからわかんないんだけど」
レアンドル「まあいいでしょう。用件はなんでしょうか?」
主「いや、なんにも?強いて言うならもう一回キスしたい」
レアンドル「お断りします」
主「えーケチ」
レアンドル「そういう問題ではないです」
主「けちんぼう」
レアンドル「……はぁ……まったく……」
主「えへへ〜この体でレアとキスするの面白いんだよなぁ、目線が合うから」
レアンドル「…………女性体の日に覚悟しておいて下さいね」
主「えっ」
レアンドル「なんでもありません」
レアンドル「主、お召し物をご用意しました」
主「ありがと、これ着るのも久々だね。まぁ、着たくもないんだけどさ」
レアンドル「………」
主「東で戦だそうだよ、帰りは…明け方かな」
レアンドル「御意」
主「寝てていいよ?」
レアンドル「お待ちさせて頂きます」
主「そう」
レアンドル「お気を付けて」
主「ん、いってくる」
―
――――――――
―
主「ただいま〜」
レアンドル「おかえりなさいませ」
ラウ「おかえ、り……!?!?!?」
主「どしたのラウ?」
ラウ「な、なんですかその傷!?」
主「ん?ああ、気にしないで」
ラウ「気にしますよ!?」
主「大丈夫だよ」
ラウ「……僕が治します」
主「ん?どうやって?」
ラウ「……治癒魔法を使います」
主「……へぇ、すごいね」
ラウ「……はい。だから、じっとしていて下さいね」
主「わかった」
ラウ「いきます………………あれ?怪我が、ない?」
主「返り血だからねぇ」
ラウ「……」
主「そんな顔しないの」
ラウ「……主、あの、お願いがあるのですが」
主「ん?」
ラウ「……頭を撫でてくれませんか?」
主「……」
ラウ「……やっぱりダメですよね」
主「湯を浴びてからでいい?ラウが汚れちゃう」
ラウ「今が!……いいです…」
主「……じゃあ、おいで」
ラウ「はい……」
主「よしよし」
ラウ「……ありがとうございます……」
主「ふふ、ラウは可愛いなぁ」
ラウ「……主も、かっこよくて、可愛いです」
主「……ん?」
ラウ「……いえ、なんでもありません」